俺という存在

(俺は、南雲原に必要なのかな……)

 無謀にも思えていたフットボールフロンティア本戦への切符。それが手に入った今、俺は不安でしかなかった。

 最初は人出が欲しかったから経験者の俺は、必要だったんだと思う。──だけど、今は?

 ダンスで培った身体能力と高い向上心を持つ忍原先輩。
 見た目とのギャップが凄まじいくらいの速さで動ける亀雄。
 自分にも厳しく、努力を惜しまない四川堂先輩。
 オーラが半端なくてそれでいてサッカー経験もある柳生先輩。

 ──そして、雲明がサッカーへの熱意を取り戻すきっかけになった、すごい蹴りを持つ桜咲先輩。

(それに合併で北陽の人たちだっている。俺なんかよりよっぽど実力だってある。なんなら空宮先輩とは幼馴染みたいだし)

 最近はよく雲明と空宮先輩が相談をしたり談笑をしてるのを見る。その空気は俺なんかが割って入れるものじゃない。

(俺は、雲明を友達だって思いたいけど、雲明からしたらただの1チームメイトでしかないんだろうなあ)

 そんなことばかり頭の中でぐるぐるして、東京へ向かう準備なんて全くといっていほど進んでいなかった。

「必要とされてる間くらいは、せめて、頑張らないと──……それしか、俺にはできないから」

 自分に言い聞かせるように俺はそう口にして、重い手を頑張って動かして、荷造りを進めた。

7章の途中だけど衝動書き