手紙
「ジャック、お前宛ての荷物だ」
「え、僕宛?」
サガから手渡された小包にジャックは首を傾げた。何故なら自分宛に荷物を送る人など一人しか心当たりない上に、その思い当たる人物もつい先程会ったばかりなのだから……。
「誰から──……やっぱりロビンかよ!?」
差出人のところには「Robin Laffite」。
予想通りつい先程会ったばかりの弟の名前がそこには書かれていた。
「渡したからな」
「ちょっと、待ってよ、サガ!」
面倒事に巻き込まれたくないと言わんばかりにその場から去るサガ。ジャックはしばらく呆然としたが、渋々小包を持って部屋に戻る。
「……しょうがない、開けるか」
小包を開けると、中には便箋と昔まだ両親の元にいたころ大好きだったお菓子が入っていた。ジャックは懐かしさに目を細める。
お菓子を1つ口に含むと、懐かしい大好きな味が口に広がった。──イギリスにいたころ、よく食べていたなぁ、とジャックはしみじみと思う。
さて、問題は一緒に同梱されていた手紙だ。
(一体何が書かれているんだ……?)
ジャックが恐る恐る封を切るとそこには──……。
”大好きな兄さんへ!
きっとこの手紙が届く頃には、僕も日本に帰ってきてるだろうけど、もし帰ってきてなかったら寂しいと思うから手紙を送るね。
手紙だけじゃ物足りないと思って、兄さんが好きだったお菓子も一緒に送ったよ。よかったらエリザベスさんたちと食べて”
ロビンらしい自分への愛がこめられた文章が綴られていた。たしかにお菓子は嬉しいけど、とジャックは苦笑する。手紙はまだ続いているようで再び目を通す。
”昔、僕が兄さんに書いた手紙が出てきたんだ。懐かしくなったんだ。やっと手紙を送れて嬉しいよ”
「……」
ロビンがジャックを見つけて、再会したのはここ最近のことだ。それより前は、ロビンはジャックの居場所さえ知らずにいた。それにも関わらずロビンは「いつか再会できた時のために」手紙を書きづづけていたのだ。
”今までの手紙も兄さんに渡そうかと思ったけどやめとく。だって今は会ってお話できるから! 会って兄さんへの愛は伝えるね!”
「ほんっとさあ、馬鹿なやつ」
手紙の〆にジャックは苦笑する。相変わらずな弟に、もはや安心感すら覚えていた。
「……お菓子のお礼くらいしてあげよっかな」
ジャックそう呟くと、慣れた手つきでロビンに電話をかけた。