ロスエデのとある朝
「……!?」
ミストは目覚まし時計が示す時間を見て驚いた。
なぜなら本来起きていないと行けない時間を2時間も寝過ごしていたからだ。
慌てて寝間着のまま部屋を飛び出す。
「サガ様! ベス、ジャック。申し訳ありません、私としたことが……ーーえ?」
ミストの言葉が止まる。
なぜなら3人がキッチンで料理をしてたからだ。
「あ、ミストおはよー! ミストは甘いのとしょっぱいのどっちが好き?」
「え、えっと……?」
「卵焼きの話よ。この前、アンジュに作り方を教わったの」
「それでどっちにするの」
「……あ、あの……?」
「ミストは甘いほうが好きだ」
「おっけー、サガありがと。今作るからミストは座ってなよ」
ジャックはそう言いながら器用に卵を割り、ボウルに卵と調味料を入れ、慣れた手つきでかき混ぜる。
「ジャック、あなた料理できたんですね」
「…………まーね」
あまり深く触れてほしくなさそうなジャックの反応にミストはこれ以上の追求を控えた。席に着くと、目の前に味噌汁とサラダ、ご飯が置かれる。
「サラダはベスが作って味噌汁はサガが作ったのよ」
「えっ」
エリザベスからの思わぬ発言にミストはバッとサガを見る。ミストの頭の中で「味噌汁はサガが作った」のワードが繰り返されていた。
「いつもありがとな、ミスト」
「いや……そんな、サガ様のお役に立つためなら当然のことですので……」
「それでね、ミストが疲れてるから無理矢理にでも休みを取らせようってサガが提案したのよ」
「ベス」
サガは余計なことを言うなという目でエリザベスを見るが、エリザベスは気にしていないのかそのまま話を続ける。
「別にいいじゃない、隠すことでもないじゃない。あら、ちょうど卵焼きも出来たみたいね」
お皿に盛り付けられた卵焼きを持ったジャックが現れる。もう片方の手には唐揚げを持っていた。ミストが「そちらは?」と問いかけるとエリザベスが少し眉をひそめて「作りすぎたからおすそ分けだそうよ、アイツが」と返した。そのエリザベスの態度からアイツが誰を指すのかミストは察した。
テーブルには本日の朝食が揃う。
「あの本日は申し訳ございません」
「あーもう! 朝から辛気臭いのやめてくれない? 僕たちがやりたくてやったんだからさ」
「そうよ。今日くらいはミストはゆっくりしてちょうだい」
「……ミスト。いつもありがとな」
「! サガ……!! いえ。これに満足せず、もっとサガのお役に立てるようーー……」
「ねー、お腹空いたんだけど。冷めちゃうから食べようよ」
話が長くなりそうなミストを横目にジャックは呆れた様子で言う。それに同意するようにエリザベスも「いただきましょうか」と言い出した。
そして4人は手を揃え、「いただきます」と言って食事を始める。
(たまにはこういうのもいいかもしれませんね)
口には出さないが、LOS†EDENのメンバーと過ごす時間はミストにとってかけがえのないものだ。他の3人もそう思っていたら嬉しいと感じるくらいには。
「ミスト! 僕の作った卵焼き美味しいでしょ」
「えぇ。これならこれからはジャックに料理も手伝って頂きますか」
「え~っ。普段はミストがいるんだから僕はやらないよ」
「……お前ら、そういう話は後にしろ」
「あっ……すいません……。サガ様……」
「はーい」
たしか母の日ぐらいに思い至ってかいたような気がします