今日だけは

「ジャック、眠れないんですか?」

 ミストはリビングにいるジャックに声をかけた。
 最初は小言の1つや2つ、言うつもりだった。けれどそれをしなかったのには理由があった。

「……目、擦ると赤くなるから辞めなさい」

 ーージャックが泣いていたからだ。

 ジャックはビクリと反応し驚いたようにミストを見ると、すぐミストから目をそらす。そんなジャックを見、ミストはキッチンへ向かう。

「サガもエリザベスも心配しますよ」

 戻ってきたミストはテーブルにホットココアと自分用のお茶を置き、ジャックの隣に座る。
 ジャックはココアに口をつけるとようやく口を開いた。

「……あいつさ、本当に馬鹿だよね。あのままベスの力で僕のことなんか忘れちゃえば光の世界でやっていけたのにさ! それなのにーー」

「兄さん、殺してってなんでお前がそんなこと言うんだよ」って言葉をジャックは飲み込んだ。

「ジャック」

 ミストが心配そうにジャックを見る。普段は厳しいが、なんだかんだ仲間には面倒みのいい彼は本気でジャックを心配しているのだろう。

「彼を仲間にしたら自分がどうなるかわかっていたんですよね」

 ミストの言葉にジャックは結晶化した心臓がある辺りを抑えながら「わかってるに決まってるじゃん」と返す。

「けど、あいつも望んだから。それに誰かにやられるくらいなら僕がやりたかった。たとえ闇の世界に引き摺り込むことになっても」
「……」
「弟の願いを叶えてあげただけだよ」

 ジャックは泣きはらした顔で笑う。

「僕はLOS†EDENのジャックだからずっとあいつと一緒にはいれないけどね」

 まあ、たまには遊んであげてもいいけどね、と普段のように小悪魔っぽく言う。そんなジャックにミストは安堵する。

「ミスト、話聞いてくれてありがとう」

 そう言って立とうとするジャックの腕を、ミストはひっぱりソファに戻す。

「ミスト?」
「今日は夜ふかしを許します。私もあなたが寝るまで一緒にいてあげますので」
「…………あ~~いつもそういう感じでいてよ!」
「それは聞けません」
「え~けち」

 しばらくお互い会話もなく静寂が続く。ミストはふと横を見ると、ジャックが自分に寄りかかって眠っていた。
 ジャックが寝れていることにミストは安心する。

「明日はジャックの好きなものを用意しますか」

 ミストはジャックを抱きかかえリビングを後にした。

身体に引きづられて感情がコントロールできないジャックと仲間思いながらミストを書きたかった