双子とアンジュといい兄さんの日
「「アンジュ! 僕のこと“お兄ちゃん”って呼んでみて!!!」」
ぴったりと重なる2つの声にアンジュは瞳を瞬かせて、パチパチと何度も瞬きをする。
「へ?」
「おねがい!! お兄ちゃんって呼んでみて!! お兄ちゃんって!!」
「ちょ……ちょっと、どういうこと!?」
いきおい良く懇願するロビンにとまどいながらながら、アンジュはロビンの隣にいるジャックを見る。
「今日って”いい兄さんの日(1123)”って言うんだろ?」
「い……いい兄さんの日?」
ジャックの言う語呂合わせがピンとこないのかアンジュは首をかしげる。
「それでさ、アンジュって僕たちより年下でしょ。だから”お兄ちゃん”って呼んでほしいなあって!」
ロビンはそう言って笑顔で一歩ずいっとアンジュに近付く。それを見て何かを察したのかジャックも近付いてきてアンジュを追いつめる。
まだ話を聞いてくれるだろうと、アンジュは助けを求めるようにジャックを見るが、ジャックは悪戯っぽく微笑んだまま何も言わない。
「ねえ。僕のこともお兄ちゃんって呼んでみろよ、アンジュ」
「ちょっと、兄さん。僕が先だよ!?」
「あ、あのさあ……」
「なに!?」
「……ジャックはともかく、ロビンはあんまり年上に見えないんだけど」
「えっ!?」
アンジュの思わぬ一言にロビンはショックを受けたように目を見開き、ジャックは声を出して吹き出す。
「え〜〜〜!!? アンジュ、ひどいよ」
「いや……ロビン、お兄ちゃんってより弟……っぽいだろ。ジャックは中身は意外とお兄ちゃんだけどさあ」
「っははは……お前、弟だってさ」
「も〜〜! 兄さんもそんなに笑わないでよ!」
ぷくっと頬を膨らませて怒るロビンに、そういうところが年上っぽさを感じないんだよなあとアンジュは思う。しかし思うだけは口にせずにいた。
「……」
あいかわらずジャックはくすくす笑っていて、ロビンはアンジュにお兄ちゃんって呼んでもらえなくてちょっと残念そうにしている。そんな二人を見てアンジュはなにかを決意をしたように、こほんと咳払いをして口を開いた。
「……ちゃん」
「えっ」
「っ。ロビンお兄ちゃん、ジャックお兄ちゃん!」
突然の”お兄ちゃん”呼びに、ロビンとジャックは虚を突かれてパチパチと瞬きをする。
「……もういい?」
顔を真っ赤にして言うアンジュに、ロビンとジャックは顔を見合わせてから、アンジュに視線を戻す。
「アンジュ〜〜〜!! ありがと〜〜〜大好き〜〜〜!!」
「ちょっとロビン、痛いって」
勢いよく抱きつくロビンにアンジュは困りながら、背中を叩いて引き離そうとする。
「……たまにはいいかもな」
ジャックそんな二人を見ながら小さく呟いた。