代理キャプテン任命

「……え」

 半田は自分の手に置かれたソレに目を疑う。だってソレはチームにとって大事なものなのだから。

「雷門のことは任せたぞ、半田」
「……おい、豪炎寺。冗談だろ?」
「冗談なんかじゃない。お前が一番適任だ。お前なら俺たちがいない間の雷門を任せられる」

 豪炎寺と鬼道の言葉に半田はただただ戸惑う。2人の真ん中にいる円堂に視線を移すも、彼はただニカッと笑うだけだった。

「……悪いけど、俺じゃ荷が重すぎる」
「別にお前一人ですべてやれとは言ってない。松野たちと協力すればいいだろう」
「それなら松野か闇野の方が適任だろ。選抜候補に選ばれてるんだし」

 ──その選抜候補にすら選ばれなかった俺なんかより十分適任だろ、と口から出しかけて半田はそれを飲み込む。

 しかし鬼道はそれに気付いたようでじっと半田を見る。半田はそんな鬼道の視線が苦手で逃げ出したくなるのをどうにか堪える。

「半田なら大丈夫! そう思って俺が半田を提案した」
「円堂。……それなら理由を聞かせてくれないか?」
「んー……理由って言われてもなあ、半田なら大丈夫って思ったんだよ」

 円堂の返答に半田はため息をつく。考えるより行動に出ることの多い円堂なので、わかりきってはいたが、それでも半田は納得できずにいた。

 なんで自分なんかが。
 半田はそんな気持ちでいっぱいだった。

「円堂から話を聞いて俺も鬼道も賛成した。雷門サッカー部に長くいる、というのもあるが半田はメンバーから親しまれてるだろ」
「……」
「親しまれてる、というのは大切なことだと思うんだが」
「でも、俺じゃ……」
「とにかく! 半田なら安心して任せられるから! よろしくな、キャプテン!」

 そうやって円堂の手によって無理やり握らされた布は、半田にとって岩よりも重く感じた。