1日のはじまり
ピピピ……。
静かな部屋の中でアラーム音が鳴る。
布団で眠る主はもぞもぞと腕を出し、アラームを止める。
「……ん、きょうも、がんばろう」
寝ぼけた声でまるで自分に言い聞かせるかのように半田は言う。んっ、と背伸びをしてからベッドから起き上がる。
壁に掛けてる制服一式をバッグにいれ、隣に掛けていた指定のジャージに着替える。着替えを終えるとまだ寝ている家族を起こさないように静かに部屋を出、朝食の用意をする。
食パンをトースターで焼いている間に飲み物の準備をする。その手つきもここ数日のおかげで慣れつつある。
(今日は新しいやつらのメニュー、組み直したやつをやってもらって……。そうだ宍戸と少林が技見てほしいって言ってたよな)
考え事をしながらぼーっとしてると、チンッと焼けた音がする。その音に半田はびくりと肩を震わす。慌ててトースターから食パンを取り出すと、そのまま口に頬張る。
(あと練習試合もスケジュール組まないとな)
今の雷門はキャプテンだけでなく、木野をはじめとするマネージャー陣も不在だ。だから練習試合のスケジューリングなども残りの部員たちでやる必要がある。
「うわ、もうこんな時間かよ。急がなきゃ」
時計にうつる"06:20"という時刻に、半田は慌ててパンを食べる。朝練の準備を踏まえるともう家をでなければならない時刻だ。
「えっと、制服は鞄に入れたから大丈夫。あと購買用のお金もある、それから──」
「真一?」
「母さん。ごめん、起こしちゃった?」
パジャマ姿の母の姿に半田は申し訳なさそうに謝る。「もう学校いかなきゃ……!」と慌ただしく家を出た息子の姿を心配そうに母は見送った。
「……真一。あの子無理してなければいいけど」
自分の心配が杞憂であればいいと、母は思わずにはいれなかった。