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暗い部屋の中で僕は、窓の外を呆然と見る。
さっきまでそこにいた悪魔は紅色の光になって、月へと向かうかのように空へと還っていく。
「ぼく、は──」
歌いたかっただけなのに。
自分の口から出たその声はあまりにもか細いものだった。
あのままだと僕は弟の影でしかない。
だから神様に祈るのをやめた。
願いを叶える、そういった悪魔のことを信じて手を取ったのに。アイツは呆気なく目の前から消え去った。
「……」
首筋を撫でると噛まれた痕があり、たしかに自分は【悪魔】になったのだと実感する。
それは、自分が望んで選択した結果のはずなのに僕の心は晴れずにいた。