朝練の1コマ

 6時40分。
 朝練は7時からなので、とりあえず余裕を持ってグラウンドにつけたことに半田は安堵する。

 とはいえ、朝練が出来るように準備をしなければならない。さっさと自分の荷物を部室のロッカーへとしまい、ボールなどを取りに倉庫へ向かう。

「半田くん、おはよっ」
「大谷、おはよう」

 半田に声をかけた少女──大谷つくしは、マネージャー不在の状況に助っ人を申し出てくれた。大谷は「運ぶの手伝うよ」と半田に着いていく。

「大谷が来てくれて本当に助かるよ」
「力になれてるなら嬉しいよ」
「いやマジで助かるって、正直俺だけじゃドリンクとかまで手回らなかったし……」

 他愛のない会話をしながら歩いていると目的地である倉庫に到着する。ボールの入ったカゴなどを取り出し、コートへと向かう。

 コートが見えて来ると部員たちが準備運動をしているのが見えてくる。半田たちに気付いた猫耳帽子を被る部員──松野が駆け寄る。

「あ、半田だ。もー遅いよお」
「そう思うなら手伝えよ、松野」
「え〜朝はギリギリまで寝てたいんだよ」
「俺もだよ」
「半田。とりあえず準備運動は終わらせたけど次はジョギングでいいか?」
「ああ、大丈夫だ」
「わかった。次、ジョギングだ」

 最近仲間になった闇野は、半田からの指示を確認すると他の部員へと伝える。

「半田くん、あとは私が準備しとくから半田くんも練習に参加してきて」
「悪い、助かる」

 半田は大谷にお礼を言ってその場を離れると、軽く準備運動を済ませ、ジョギングをしている部員たちの列に混ざる。

「闇野、さっきはありがとう。助かった」
「気にするな」
「いや、本当にいつも助かってる」
「役に立ってるならそれでいい」

 口数は少ないが、半田は闇野を信頼していた。今日のように半田が困っていると手伝いを申し出てくれる。それに実力もある部員の一人なのでそういう意味でも半田にとってありがたい存在だ。

「……ほんと、なんで俺なんだろうな」
「半田?」

 ぽつりと呟いた独り言に闇野は反応する。半田はなんでもないと、闇野に返してジョギングを再開した。

 そんな半田の背中を闇野ともう一人──松野はじっと見ていた。