悪夢

 真っ暗闇の中に二人の少年がいた。明かり一つない暗闇の中で、一人の少年がもう一人の少年──半田を押し倒していた。

「お前、それで許されたと思っているのか?」
「いくら円堂たちが許したって周りはどう思っているんだろうな」

 そう半田へ言葉を投げるもう一人の少年は半田にそっくりだった。かつてエイリア石に墜ち、ダークエンペラーズの一員だった時の半田の姿に。

「……っ」

 もう一人の自分の言葉に何も返せずにいる半田を、ダークエンペラーズの半田は暗い瞳で見つめる。

「エイリア石がなきゃお前は弱いんだよ、何にもできない」
「現にお前はまともに代理キャプテンを努められていないだろ?」
「だったらいっそサッカーなんてやめてしまえ」
「そうすればきっとみんな許してくれる」
「っ……うるさい!」

 自分自身の言葉に耳を塞いで、半田はもう一人の自分から逃れようとした。しかし自分の顔をした相手は逃がさないとばかりに半田の肩を掴む。そしてダークエンペラーズの半田がエイリア石を押し付けようと──……

「はぁっはあっ……ぁ……」

 半田は慌てて布団から飛び起きた。息は荒く、全身はじっとりと汗をかいていた。時計を見るとまだ夜中の2時を回ったところで、起きるには早すぎる。
 しかしもう一度寝ようと思っても、あの夢をまた見るのでは、と怖くて寝れずにいた。

 円堂たちと和解して数日経った頃から夢でダークエンペラーズであった自分を見るようになった。最初はただ夢に出てくるだけだったが、代理キャプテンを任されてからは今日のように夢に出て追いかけてくるようになった。

 特に半田を苦しめてるのは、もう一人の自分が言ったある言葉だった。

「……そんなの、俺が一番わかってるよ……」

 膝を抱えて布団の上に座りながら、半田は弱々しく呟いた。