力になりたくて
「……」
毎日のように悪夢に悩まされる半田は、睡眠不足に悩まされていた。そして宍戸をはじめとした後輩たちが思わず声をかけるくらいには、半田の様子は日に日におかしくなっていた。
「悪ぃな、心配かけて。多分慣れないことやって疲れてるだけだから」
そう弱々しく笑う半田に、宍戸たちはこれ以上強く半田を止めることができずにいた。だけど今にも倒れそうな半田を見ていられない宍戸たちは他の人を頼ることにした。
「──なるほどね」
「俺たちじゃ、半田さんを止められないんです」
「松野さんなら半田さんと仲いいし話聞いて貰えるんじゃないかって」
「うーん……、一応話してはみるけどさぁ」
宍戸たちが相談したのは、同じサッカー部かつ部以外でも半田と仲良くしている松野だった。
「多分、あいつ僕の言うこと聞かないと思うよ」
松野は半田がおかしくなった原因を少なからず知っている。なぜなら松野自身も「似たような夢」を見ているからだ。
(まあ原因は他にもあるんだろうけど)
そして他の原因にも思い当たるものがあるからこそ松野は宍戸たちにああ返した。
「……ところでさ、宍戸たちは変な夢は見てない?」
「夢、ですか? 特に見てないですけど」
「見てないでヤンス」
「……そう。わかった、ありがとう」
「松野さん、ひょっとしてなにか知ってるんですか?」
「うーん、どうだろうね。まあ、とりあえず放課後にでも半田と話して見るよ」
松野は宍戸たちの質問を曖昧にして、その場をはぐらかした。
(せめて半田の力になりたい人がちゃんといるってのは伝わればいいんだけど)
松野はそう思ってから、宍戸たちを安心させるように笑った。