02
あれからどのくらいの月日が経ったのだろう。
僕は気分転換に屋敷を探索していた。なにか外についての情報があればいいと思った。
「~♪」
探索しながらも歌うことはやめない。だって歌うためにヴァンパイアになったのだから。
以前のように歌えないとしても、それしか今の自分にできることはないのだから。
「……ん? ここは……」
屋敷を歩いているとある部屋に辿り着いた。僕はその部屋から感じる魔力に覚えがあった。
きっとアイツが使っていた部屋だろうと、思いながら恐る恐る扉をあけ、部屋に足を踏み入れる。部屋の中には古めかしいテレビが一台置かれていて、他には何もなく閑散としていた。今がいつなのか知るのにちょうどいいと僕はテレビの電源ボタンを押す。──すぐに後悔することになるとは知らずに、テレビが映るのを待つ。
「あっ」
テレビに映るのは昔はずっと隣にいた片割れ。記憶にある彼より幾分か大人びた顔をしていた。
『天使の歌声をご存知ですか? 今話題の声楽家の愛称です。彼の名前は──』
キャスターが名前を言う前に僕は弱弱しく彼の名前を呟いた。
『みなさん、はじめまして! ロビン・ラフィットです。今日はよろしくお願いします!』
『ロビンくんは地元の聖歌隊で歌っていたところを、声楽家の××氏にスカウトされたのをきっかけに声楽家になったんですよね?』
『うん、そうだよ!』
『ロビンくんの歌声は「天使の声」と言われてますがご自身ではどう思っていますか?』
『すごく光栄だよ! 嬉しい!』
『今日はその歌声を披露してもらえるということですごくたのしみです』
『ふふ。楽しみにしてね』
ロビンはテレビ越しに僕に笑いかける。僕はそんなロビンから目が離せなかった。
しばらくして準備が整ったのかロビンの歌唱が始まった。
──皮肉にもその歌は僕がいつしか歌えなくなった歌だった。
ロビンの透き通るような声が部屋中に響き渡る。
ロビンは歌声で人々を魅了していった。僕はそれをテレビ越しに見ることしかできなかった。
『We thank thee that Thy Church unsleeping』
「We thank thee that Thy Church unsleeping」
僕もロビンを追うように歌うが、僕から紡がれる音はあまりにもひどいものだった。しまいには喉が痛くなり、歌い続けることができなくなった。そんな僕のことなんか知らないと言わんばかりにロビンは歌い続ける。
僕はその光景に絶望しか感じなかった。そして確信する、僕は願いをかなえたんじゃない。ただヴァンパイアになったのたのだと。
「あああああああ──……ッ!!!!!」
僕の叫び声は誰にも届かない。