04
「おい」
突然お兄さんに声を掛けられ僕はびくりと肩を震わせる。お兄さんは僕を持ち上げると近くにあった椅子に優しく座らせる。
そんなお兄さんに困惑していると、お兄さんは肩に背負っていたケースを開ける。中からはギターが出てきた。
「大人しく聞いてろ」
そうお兄さんは僕に言うと、ケースの中からピックを取り出しギターを弾き始める。
──それは僕が初めて聞くジャンルだった。
荒々しくパワフルな、そうまるで破壊的なサウンドが奏でられていた。
「~♪」
お兄さんの歌声も乗って、荒々しさは増していく。
聞いているうちに僕の胸は高鳴っていた。
──僕も一緒に歌いたい! と思うと同時に、僕の口から歌が漏れていた。
歌いだした僕にお兄さんは驚いた顔をしたが、すぐにやりと笑う。
曲も歌詞も知らないはずなのに。こみあげる感情が歌になっていく。それが楽しくて、気が付けば最後まで歌っていた。歌い終えると僕はお兄さんのもとに駆け寄る。
「お兄さんすごいね! お兄さんの歌、なんかすごいドキッとした!」
「そっちのほうがいい」
「え…?」
「お前がどうしても聖歌や賛美歌歌いたいなら好きにすればいい。だけど音楽は他にもたくさんある。もっと好きに生きていいんだ」
「……そっか」
お兄さんの言葉に心が晴れたような気がした。
「……そっ、か……。僕、もっと好きにしていいんだ」
泣き出した僕をお兄さんは優しく撫でてくれる。その優しさが嬉しくて僕はまた泣き出した。