少年はそれでも歌を歌いつづける

05

「それでお前、本当に俺と日本に来るのか?」
「お前じゃなくてジャックだよ、サガ」

 あの後、僕はお兄さん──サガからヴァンパイアのことかいろいろ教わった。
 曰くヴァンパイアは「偽りを歌にできない」らしい。だから自分の感情と異なる聖歌や讃美歌を歌えなくて、自分の感情が乗ったからサガと一緒に歌えたのだろう。

 ヴァンパイアとしても幼い僕はまだ力をコントロールできていない。それもあって暴走しかけていた状態だったようだ。今はサガが知り合いから貰った制御用の指輪のおかげでだいぶ安定している。

「ジャック。いいんだな?」
「だってイギリスにいるのは危ないじゃん」

 僕は行方不明になったことになっているようだった。しかしだいぶ時間が経っているからか時期に死亡認定されるだろう。かといってこのままイギリスに居続けるのはリスクが高い。だからサガと共に日本に行くことに決めた。

「……」
「……だめ?」
「お前、変わってるな」

 呆れながらサガは小さく笑う。

「サガ、笑うとかわいいね!」
「はあ?」
「あとさ、僕もヴィジュアルプリズンに参加したい」

 僕の言葉にサガは驚く。サガは優しいから僕を気遣っているんだと思う。だけど僕は僕として進みたいって思ったから。

「サガが言ったんだよ。好きにしろって。だから、言ってる」
「ほんとうにいいんだな?」
「うん。だって僕は生まれ変わったんだから!」

 そう僕はサガのおかげて生まれ変わった。

 僕はその証拠である首筋の噛み跡を見せる。

 サガは、僕の気持ちを確認すると僕が噛みやすいように首筋を広げる。つまりこれはOKということだ。

「ありがとう、サガ」

 僕はそう言ってサガの首筋に嚙みついた。


 僕は僕らしく、僕の歌を歌い続けてやる。
 そんな僕の歌が10年の時を経て大嫌いなだいすきな弟に届くなんて、このときはまだ知るよしもなかった。